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俺のアイドル楽曲大賞2018

2018年、アイドルは完全に崩壊した。PASSPO☆ベイビーレイズJAPAN、アイドルネッサンスなど中堅アイドルが相次いで解散。夢の架け橋は途絶えた。地下アイドルと地上アイドルに二極化するも、決して未来へのビジョンが描けているわけではない。頼みの綱は坂道とWACKか。さらなる産声を期待したいところ。一方楽曲においては新たな活路を開こうと、杓子定規ではないユニークな作品が急増。ということで、本家「アイドル楽曲大賞」をベースに、2017年12月1日〜2018年11月30日リリースされたアイドル楽曲のベスト30を私の独断と偏見で選出し、ランキング付けした。

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 ※ハロプロ楽曲に関しては別枠にてレビュー。

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第30位 フィロソフィーのダンス「イッツ・マイ・ターン」

プロデューサー加茂啓太郎が手がけるフィロソフィーのダンス、8枚目のシングル。作詞はヤマモトショウ、作曲は宮野弦士。ソウルフルでグルーヴィーなディスコサウンドに乗せ、フィロのスの繰り出す音楽とダンスで、シーンにコペルニクス的転回をもたらす気概を歌った。パワフルな歌声の日向ハルを始め、4人のボーカルの個性が見事に最適化。ニッチながらブレないスタンスが今日の評価につながった。

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第29位 クマリデパート「ピアノ」

ekoms所属”完全王道アイドル”がコンセプトのクマリデパート、会場限定CDとしてリリースされ、その後ミニアルバム「クマリデパート2」に収録。作詞作曲はプロデューサーのサクライケンタ。猫との出会いと死を描いたキュートなアイドルポップスだが、随所に"現音ポップ"が盛り込まれサクライ節が光る。天真爛漫な早桜ニコのアイドル性に釘付け。ちなみにこの楽曲、過去のサクライ提供曲のリメイク作との噂。

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第28位 新しい学校のリーダーズ「最終人類」

”踊る、セーラー服と奇行癖”を標榜する4人組ダンスパフォーマンスユニット新しい学校のリーダーズ、1stアルバム「マエナラワナイ」リード曲。作詞はモーモールルギャバン、作詞はH ZETT Mアヴァンギャルドなピアノを核にした微かに昭和歌謡の匂い漂うジャズロックと、優等生的であり過度に芯の強いSUZUKAの歌声のアンバランスさが絶妙。人を見透かしたかのような独創的なダンスにも注目。

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第27位 WHY@DOLL「Sweet Vinegar」

北海道札幌市出身の”オーガニックガールズユニット”WHY@DOLL、T-Palette Recordsからリリースされた4枚目のシングル。作詞作曲はAwesome City Clubのatagi。タイトル通りの甘酸っぱい失恋ソング。アジアンテイストのメロウなシティポップの中に、80年代のトレンディドラマのような下世話で軽薄な雰囲気が漂う。このバブリーな空気感は、2人の生まれ持った資質なのだろう。リアルなベッド・イン。

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第26位 校庭カメラアクトレス「ミギヒダリ」

オフィス彩所属の女優によるアイドルラップユニット校庭カメラアクトレス、1stシングル。作詞はtapestok recordsディレクターjas、作曲は同レーベルプロデュースチームALYT-。少女の日々の葛藤を、エモいドラムンベースに乗せてラップする。トランシーで焦燥感が印象的だった一連の校庭カメラシリーズと比べると、比較的キャッチーに。地下のおっさんヲタクが、次々と園田あいかにハマる現象が起きる。可愛いは正義。

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第25位 脇田もなり「Gozigen Lover-Joi」

元Especiaのソロシンガー脇田もなり、2ndアルバム「AHEAD!」収録曲。作詞は鈴木桃子、作曲は佐々木潤と、COSA NOSTRAの元メンバーが手掛けた。ムーディーで洗練されたブラコン調のアレンジと、脇田のセクシーでスウィートな歌声がベストマッチ。流石、信頼と実績のVIVID SOUND。シティポップを基調としたEspeciaと、アッパーチューンの多い脇田のソロ活動との架け橋となるような一曲。

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第24位 BiSH「PAiNT it BLACK」

今年横浜アリーナ単独公演を成功させ、快進撃が続くWACK所属のBiSH、4枚目のシングル。作詞はbeat mints boyzこと音楽プロデューサーの松隈ケンタとプロデューサーの渡辺淳之介、作曲は松隈ケンタ。諦めない想いを歌った、正統派のキャッチーなロックチューン。一方、独特な声質のリンリンとアユニ・Dの歌割りを多く割くという、新たな取組も。この楽曲で、BiSHはオリコン週間1位を獲得した。

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第23位 絵恋ちゃん「ダメだね」

”カリスマ”絵恋ちゃん、3rdフルアルバム「スープサーカス」収録曲。作詞作曲は中村友則。リバーブの掛かったメルヘンチックなテクノポップ。絵恋ちゃんをイメージして書かれたという負け惜しみを含んだ自らを卑下する歌詞は、ヲタク32人との結婚式や沖縄での新婚旅行を通して聴くと、「不束者ですが…」といった嫁入りの挨拶のようにも捉えられ感慨深い。活動休止からの再起を心からお待ちしております。

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第22位 sora tob sakana「Lightpool」

今年ワーナーブラザース ジャパンからメジャーデビューした4人組ユニットsora tob sakana、3rdミニアルバム「alight ep」リード曲。作詞作曲は音楽プロデューサーのハイスイノナサ照井順政。変拍子でベースがうねりまくるポストロック。ノスタルジーが強調された田舎のイメージが強かったこれまでと比べ、グッと都会的でシャープに。メンバーの成長に沿って、その先を模索している様子が伺える。

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第21位 RECOJO「TO源KYO」

青春アミーゴ」「抱いてセニョリータ」などを手掛けた作詞家zoppプロデュースのRECOJO、1stデジタルシングル。作詞はzopp、作曲はJunxix.。東京を桃源郷に見立てたタイトル、ノリの良い軽快なファンクサウンド、言葉遊びが満載の韻を踏んだ歌詞、全てが完璧。RECOJOは今年7月をもって解散。zoppと運営は来年、新グループを立ち上げる。ただプロデューサーと運営に二度目はあっても、アイドルに二度目はない。

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第20位 RYUTist無重力ファンタジア」

新潟県在住の4人組アイドルRYUTist、5枚目のシングル。作詞はTWEEDEESの清浦夏実、作曲は インドネシアのシティポップバンドikkubaru。まるで宇宙空間をゆるやかに漂っているような感覚に襲われる、リリカルでアーバンなミディアムチューン。ジョージ・マイケルのようなサックス使い、繊細に積み上げられたボーカルワークに脱帽。「真空のカルーセル」「突然の磁気嵐」などの言葉選びが至高。

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第19位 眉村ちあき「ピッコロ虫」

”天才”眉村ちあき、3rd配信限定シングル。作詞作曲は眉村ちあき。アイドルを肯定した極上のポップスを、非凡な楽曲制作センスと圧倒的な歌唱力で作り上げた。サマーソニックの出演権を掛けたオーディションで、審査員が下を向き、アイドルに偏見を持っていると感じた悔しさから誕生。アイドルとして実は苦労人であり、アイドルに人一倍プライドのある眉村が、このカルチャーの魅力を世の中に提示する。ヲタクなら泣く。

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第18位 Kaede(Negicco)「ただいまの魔法」

今年結成15周年を迎えた新潟在住3人組のNegiccoのメンバーKaede、2枚目の7inchソロシングル。作詞作曲はKaedeがかねてよりファンを公言していたTRICERATOPS和田唱。失われていく景色と永遠の愛を綴った、シロフォンのリフが心地よい上質なポップス。正直、Kaedeの透き通った歌声はNegiccoの他のメンバーのパンチの効いた歌声と比べ、若干物足りなさを感じていたけど、この楽曲にはこれ以上無いほどピッタリだ。

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第17位 jubilee jubilee「you sayマジック」

鳥取島根のライブハウスAZTiCがプロデュースするjubilee jubilee、2ndシングル「さくらcelebrate」収録曲。作詞作曲はThe Mysterycircles(ex.BOUZUMANS、ex.Sunchago)のsiji。Sunchagoのカバー。ブリブリなチョッパーベースが躍動する極上のディスコファンク。歌詞は「一家に一本」「極細・細すぎ」と、まさかの油性マジック。落ちサビでヲタクは油性マジックを掲げる。メンバー特有のリリシズムで原曲超え。

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第16位 KOTO「TAIKUTSUが止まらない」

今年ユニバーサル ミュージックジャパンからメジャーデビューしたKOTO、2ndアルバム「ばいばいてぃーんずららばい」収録曲。80sテイストのクールで攻撃的なエレクトロポップ。文法より韻を重視した歌詞で、唯我独尊で傍若無人な女の子の気持ちを表現。喫茶独特のメルヘンチックなシンセも散りばめられ、唯一無二の世界観に昇華。どことなく哀愁も感じる。ちなみに振付はWINK淋しい熱帯魚」をオマージュ。

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第15位 桜エビ〜ず「リンドバーグ

私立恵比寿中学の妹分的存在の桜エビ〜ず、配信曲としてリリースされ、その後2ndシングル「Summer Magic」に収録。作詞作曲はHave a Nice Day!浅見北斗。チープなシンセと4つ打ちのドラムマシンのリフが不思議な高揚感を醸す、中毒性のあるライブの鉄板曲。初の大西洋単独無着陸飛行に成功したチャールズ・リンドバーグをモチーフとした男性目線の勝ち気な歌詞で、スタダで今一番イケてるグループに遜色ない。

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第14位 amiinA「Jubilee」

独自の世界観を構築しているガールズユニットamiinA、5枚目のシングル。作詞作曲はGOING UNDER GROUND松本素生。1stアルバムのタイトルでもある”Avalon”の外側へ新たな旅に出ることをテーマに制作され、これまでの作曲陣nanolineから刷新。突き抜けるような爽やかなイントロから、「連れてってよボーイ」という高揚感のある開放的なサビへ一気に展開。メンバーのピュアな個性はそのままに、よりエネルギッシュに。

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第13位 Good Tears「へえ、そーお?」

オーディション番組「ラストアイドル」から誕生した4人組アイドルGood Tearsラストアイドルの4枚目のシングル「Everything will be all right」収録曲。作詞は作詞センター、作曲は作曲研究所ことともに近田春夫。Donna Summerを思わせるエレクトロディスコ。一見トリッキーなコミックソングと思いきや、実は「顔洗って出直しなさい あっ別ちゃん(安倍晋三)」など、言葉の隠し絵を巧みに忍ばせたプロテストソングだ。

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第12位 WEAR「ショートスリープコード・デイドリームハミング」

大阪西成を拠点に活動する”ストレンジポップアイドルグループ”WEAR、1stシングル「THE ORDINARY CIRCUS」収録曲。作詞作曲はプロデューサーのO-ant。白昼夢をテーマにした、轟音響く浮遊感のあるシューゲイザー。「ファラウェイ ファラウェイ」のフレーズと振りがフックになっていて、アイドルソングとして絶妙な着地に。果たしてHauptharmonieでは辿り着けなかった未来へ到達することが出来るのか、注目である。

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第11位 CY8ER「ハローニュージェネレーション」

”世界を騒がすガチマヂアイドル”がコンセプトの苺りなはむ率いるCY8ER、1stアルバム「ハローニュージェネレーション」リード曲。作詞作曲はYunomi。和テイストのサウンドが差し込まれたメランコリックなFuture BassというYunomiの真骨頂。独特のアニメ声で新世代の到来を呼びかける。クラップが軸に構成され、ボーカルの無いドロップでテンションは最高潮。CY8ERにとっての新たなアンセムである。

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第10位 lyrical school「Cookin' feat. Young Hastle」

アイドルラップのパイオニアlyrical school、Young Hastleとのコラボ曲で、来年CDリリース予定。作詞はYoung HastleとSUEKKO LIONS©、作曲はZOT on the WAVE。現在世界を席巻しているトラップのビートに乗って、いかにも悪そうな雰囲気で料理のラップをかます。risanoのスキルフルなフロウが最高。トラップを可愛いという切り口で解釈出来るのは、世界広しと言えどリリスクだけ。

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第9位 3776「八十八夜」

富士山ご当地アイドル3776、企画盤である歳時記シリーズ「歳時記・第二巻」収録曲。 作詞作曲はプロデューサーの石田彰Squarepusherのような緻密に編み込まれた攻撃的なドラムンベースに、井手ちよのが鬼気迫る表情で舞う。現代芸術とアイドルポップスの最終到達点。一夜から八十八夜までカウントアップするフレーズは「3776を聴かない理由があるとすれば」を彷彿とさせ、ソロで再出発する決意が込められている。

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第8位 FEATURES「Rendez-vous feat.MIYUU(arrange)」

ハイタッチガールズの運営が新たに立ち上げたFEATURES、1stアルバム「GOODMUSIC」のリミックス配信アルバム「GOODMUSIC 'TURBO」リード曲で、女優の手島実優をボーカルに起用。作詞作曲は川上ヒロム。Rendez-vousとは宇宙船のドッキングのこと。大宇宙で交信しているようなヒプノティックなシンセのリフレインが印象的なエレクトロハウス。これぞネオ・ローカルシティPOPの進化系。

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第7位 SAKA-SAMA「SAMA-DREAMING with 皮茶パパ」

 ”Lo-Fiドリームポップアイドル”SAKA-SAMA、ライブCD「ライブ・フロム SAKA-SAMA ワールド」収録曲。作詞作曲は皮茶パパ。轟音鳴り響く粗削りなギターサウンドに乗った「ming-ming ゼミゼミ」の延々ループで思考回路はショート寸前。中毒性がとにかくヤバい。メンバーへの夢についてのインタビューを元に作られた歌詞は、蝉がモチーフになっており、寿命の短いアイドルのメタファーとなっている。

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第6位 でんぱ組.inc「ギラメタスでんぱスターズ」

鹿目凛根本凪が加入したでんぱ組.inc、16枚目のシングル。作詞はヒャダインこと前山田健一、作曲は浅野尚志。激変する高速ビートに、早口で畳み掛ける高圧縮電波ソング。宇宙規模で捉えた今後の決意はポジティブ100%。特異な声質とキャラクタライズされた歌唱法は他にはない。でんぱブレイク以降、雨後の筍のように似たようなクソみたいな極彩色ピンチケアイドルが出てきたが、やはりオリジネーターは格が違う。

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第5位 RYUTist「青空シグナル」

無重力ファンタジア」と同様、RYUTist、5枚目のシングル。作詞は清浦夏実、作曲が沖井礼二とTWEEDEESのコンビが手掛けた。爽やかな疾走感とキュートなオシャレさに、ひとつまみの毒っ気が加わった沖井節炸裂の一曲。Cymbals「Highway Star, Speed Star」を彷彿とさせ、完全にツボ。メンバーの美しいハーモニーと絡み合う、うねるベースライン、特にラストに向けて変態的に畳み掛けるところが格別。

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第4位 東京女子流「ラストロマンス」

新クリエイティブ陣を迎えて再始動した東京女子流、24枚目のシングル。作詞作曲はシンガーソングライターの春ねむり。シティポップバンドLucky Kilimanjaroがアレンジを務めた、初期のブラックミュージックの香りを漂わせるエレクトロポップ。歴代の楽曲「鼓動の秘密」「深海」が盛り込まれた歌詞は、まるで恨み節。退廃的でトゲのあるトラックに乗った「どうしようもないよね」がヲタクの心臓を貫通。

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第3位 prediaHotel Sunset」 

平均年齢29歳の”大人アイドル”predia、2ndアルバム「ファビュラス」リード曲。作詞は栗原暁、作曲は栗原暁と久保田真悟と、Jazzin' parkのコンビが提供。ラップやファンクの要素を盛り込んだ妖艶なラテン調のビートに、魂を揺るがす湊あかねのボーカルがスウィング。歌詞は「ピーチ、マンゴー&バナナ」とそのままズバリ。若いアイドルが跋扈する中、見事に個性を際立たせ、オンリーワンの存在に。

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第2位 tipToe.「blue moon.」

"等身大センチメンタルアイドルグループ"がコンセプトのtipToe.、3rdシングル「thirdShoes.」収録曲。作詞作曲は彼方あおい。ドビュッシー「月の光」の旋律を引用した、幻想的でドラマティックな一曲。ダブルで録られたイノセントな歌声が美しい。月夜のプールで「ダンスを踊った」というフレーズが違和感あるほど繰り返され、プラトニックな秘め事を暗示。少女による寓話のような世界観は岩井俊二を意識か。

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第1位 眉村ちあき「リアル不協和音」

眉村ちあき、アルバム「Germanium」「目尻から水滴3個、戻る」収録曲。作詞作曲は眉村ちあき。LiLii Kaonaにインスパイアされ、2時間半で書き上げた。不穏な鍵盤や歪んだギターが飛び交う中、一人で突き進む決意を力強く熱唱。荒削りながら、音楽への初期衝動が詰め込まれた。この楽曲を発表してから1年、それを証明するかのように、自ら会社を立ち上げ、各種メディアで活躍。新宿LOFTワンマンを成功させ、トイズファクトリーと契約。来年は新木場コーストでワンマンを行う。2018年の眉村の快進撃は、ブームが終焉し荒廃したアイドルという地で、一筋の光になった。

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