TikTokでいかにバズるかが重要な指標となった2024年のアイドル。自己肯定感を高めるカワイイソングで一躍第一局に躍り出た、アソビシステムのKAWAII LAB.。FRUITS ZIPPERは、2日間にわたる日本武道館公演を成功させ、時代の寵児に。また、iLife!など20組ほどを擁するHEROINESも存在感を増している。女性ファンの増加により、アイドルは疑似恋愛の対象から憧れの存在へ。もはや旧来のロジックが通用しなくなった今、どのようなアイドル楽曲が世に放たれているのだろうか。ということで、本家「アイドル楽曲大賞」をベースに、2023年12月1日〜2024年11月30日リリースされたアイドル楽曲のベスト30を私の独断と偏見で選出し、ランキング付けした。

※ハロプロ楽曲に関しては別枠にてレビュー。
第30位 超ときめき♡宣伝部「最上級にかわいいの!」
第29位 トナリア「ワンダーランドを夢見てる」
第28位 nicora ray ark「Rise」
第27位 スパンコールグッドタイムズ「UNIVERSE」
第26位 さくまる。「電撃kawaii SHOCK!」
第25位 月刊偶像「CITY feat. 柳美舞(ばってん少女隊)」
第24位 タイトル未定「群青」
第23位 demipogune「Let me」
第22位 NUANCE「Mellow Dancer」
第21位 くぴぽ「麺 OF LIFE」
第20位 =LOVE「絶対アイドル辞めないで」
第19位 FAREWELL, MY L.u.v「Old School (feat. 山添みなみ)」
第18位 SANDAL TELEPHONE「SHUTDOWN→REBOOT」
第17位 CYNHN「いいおくり」
第16位 0番線と夜明け前「ブラックアウト未満」
第15位 himawari(船橋)「君が全部だ」
第14位 RAY「津軽よされ節」
第13位 清竜人25「青春しちゃっていいじゃん」
第12位 月刊PAM「春の夜に月と泳ぐ」
第11位 AIR-CON BOOM BOOM ONESAN「亜美」
第10位 CUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」
第9位 フィロソフィーのダンス「Love&Loud」
第8位 ukka「推≒恋」
第7位 Fenomeno「I’mNotAYesman」
第6位 RYUTist「君の胸に、Gunshot」
第5位 東京女子流「フォーリンラブな時」
2010年結成のガールズグループ東京女子流、配信シングル。作詞作曲はきなみうみ。タイトなベースラインが鳴るブラックミュージック由来のメロウなトラックの上に、切なさを含んだ旋律が漂う。許されない恋に揺れる心の機微を、デビュー当時小中学生だった彼女たちが14年の歳月を経て、深みのある表現で歌い上げるようになり感慨深い。歩んできた軌跡が、そのまま音楽として昇華されたような一曲。
第4位 diig「neon」
サクライケンタが代表を務めるekoms所属の5人組グループdiig、配信シングル。作詞は小南泰葉、作曲を諭吉佳作/men。ジャンルを越境するような、即物的な刺激に溢れたトラックは、hyperpop以降の雑食的音楽観を反映しつつ、夜をテーマに若者の不安や孤独を繊細に描き出す。刹那性と不安定さを孕みながらも、唯一無二の存在感を放つ仕上がり。メンバーそれぞれが個性的な歌声を持つ中、シノのカリスマ性がひときわ際立つ。
第3位 文坂なの「真夏のリュミエール」
フリーランスのセルフプロデュースソロアイドル文坂なの、配信シングル。作詞作曲はevening cinemaの原田夏樹。「ため息さえも」と同じ布陣。80sシティポップの文法を下敷きにしたアイドルポップ。令和の暑い夏に、涼し気な昭和の風がオープンカーの窓から差し込む。サビ前のホーンセクションのキメに、テンション爆上げ。文坂の儚さと艶を両立させた歌唱が「やってんな!」と思いつつも、まんまと魅了されてしまう。
第2位 fishbowl「一雨」
静岡発のアイドルグループfishbowl、3rdアルバム収録曲。作詞作曲はヤマモトショウ。宮野弦士による、バンドサウンドの温もりと瑞々しさを兼ね備えたアレンジが光る。雨をモチーフに、一瞬の出会いや恋、通り過ぎていく感情の儚さを描きながらも、短命だからこそ価値があると肯定。「深海」でデビューした彼女たちが新メンバーを迎え、雨として降り注ぐ。刹那なものの中に永遠を見出す姿勢が、静かにエモーショナル。
第1位 ばってん少女隊「トライじん」
スターダストプロモーションの女性アイドルセクション「STAR PLANET」所属、九州を拠点に活動するアイドルグループばってん少女隊、エムカード及び4枚目のアルバム「九祭」収録曲。作詞作曲は「水曜日のカンパネラ」のケンモチヒデフミ。タイトルは、大陸から九州北部に移り住んだ「渡来人」と、英語の「TRY」を掛け合わせた。フラメンコ調のエキゾチックなサウンドから幕を開け、和の情緒を内包したアッパーなダンスエレクトロへと鮮やかに展開。その音楽的アプローチは、「OiSa」「わたし、恋始めたってよ!」で渡邊忍が切り拓いてきた独自のダンスミュージック路線を系譜でありつつ、ケンモチが「YOIMIYA」「さがしもの」で見せた独創的なサウンドプロダクションをさらにアップデートした最高傑作。「古き良き」も「新しさ」もすべて吸収して挑戦していくというメッセージは、サウンドと歌詞の両面で見事に合致している。近年、共感を呼ぶカワイイ楽曲が席巻する中、そもそも潮流の元祖はスターダストだったはずで(ときめき♡宣伝部「すきっ!」がTikTokでバズったのが2021年)、企業としてその方向性に全振りし追随してもおかしくないにも関わらず、他に類を見ない路線を貫いているのは、一種の覚悟と言えるだろう。彼女たちのアイデンティティの核が改めて強く提示された一曲だ。