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俺のアイドル楽曲大賞2015

2015年、アイドルは再び冬の時代に突入した。AKB48は初動ミリオンを達成出来なくなり、ももいろクローバーZは紅白出場を逃した。ハロプロは人気メンバーが次々卒業し、日本武道館での単独ライブを新たに出来たグループはたった一組(アイドリング!!!)。アイドル戦国時代ともてはやされたブームは、現在その勢いは明らかに鈍っているように思える。しかし、アイドル業界には有能な人材が流入し、ユニークで秀逸な楽曲が増えていることもまた事実。ということで、本家「アイドル楽曲大賞」にならって2014年12月1日〜2015年11月30日リリースされたアイドル楽曲のベスト30を私の独断と偏見で選出し、ランキング付けした。

ハロプロ楽曲に関しては別枠にてレビュー。

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第30位 乃木坂46今、話したい誰かがいる

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 AKB48の公式ライバルという設定の乃木坂46、13枚目のシングル。アニメ「心が叫びたがってるんだ。」の主題歌。作詞はもちろん秋元康白石麻衣西野七瀬がダブルセンターをつとめた。孤独だった「僕」が「君」に恋をすることで、自らの存在意義を見出すストーリーであり、5枚目のシングル「君の名は希望」の第二章といったところか。

 第29位 RYUTist「神話」

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 新潟のローカルアイドルRYUTistの1stアルバム「RYUTist HOME LIVE」のリード曲。作詞NOBE、作曲KOJI obaで、それぞれももいろクローバーZハロプロに楽曲提供している。情報量の多いトリッキーな楽曲で一発ブレイクを狙うジャンルアイドルが増える中、軽快なアコギと清純なハーモーによる慎ましくかつ力強いメロディーはむしろ新鮮。上記アルバムは、小手先のギミックのない名盤に仕上がった。

第28位 BELLRING少女ハート「asthma」

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 アグレッシブでシャーマニックなライブで知られるBELLRING少女ハートのOTOTOY配信曲。作詞は空五倍子ことプロデューサーの田中紘治。鍵盤とギターが鈍く唸る幻想的なアンセム。ファンが声を上げるラストは、会場の熱気がピークに。フェス「AOMORI ROCK FESTIVAL'15~夏の魔物~」でファンが発煙筒を持って暴れる様子はまさにマッドマックス。

 第27位 アイドルネッサンス「YOU」

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 ソニー・ミュージックアーティスツ所属の古今の名曲をカバーするアイドルネッサンス、T-Palette Records1stシングル。大江千里が1987年にリリースした「YOU」をカバー。爽快なポップスが、ピュアな彼女たちの歌声にマッチ。「17歳」と同じく原曲超え。メンバーが一人づつソロで歌をつなぎ、個々の魅力を十二分に発揮している。

 第26位 寺嶋由芙「ふへへへへへへへ大作戦」

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元BiSの寺嶋由芙の4枚目のシングル。作詞は大森靖子。ノスタルジックな80年代良質アイドルポップで、軽快にハミングをしているかと思いきや、その歌詞は「ふへへへへ」。寺嶋の狂気を感じずにはいられない。ソロワークは正直予想の範疇を超えず、あまり評価をしていなかったが、今年リリースした楽曲は寺嶋のマッドな側面がフルに出ていて聴き応えがあった。 

 第25位 STEREO JAPAN「Anthem」

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EDMアイドルSTERO JAPANの1stアルバム「Anthem」のリード曲。EDMをアイドル歌謡に乗せた楽曲を歌うアイドルは数あれど、サビで歌のない本格的なEDMに完全に寄せたのはこれが初か。メンバーはフロアでファンと一緒に踊る様子も話題に。曲間で叫ぶ「パーティーピーポー」という掛け声はドルヲタの間で流行語になった。 

 第24位 五五七ニ三ニ〇「半世紀優等生」

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東ハトココナッツサブレ」発売50周年を記念した企画から生まれた私立恵比寿中学によるバンド五五七ニ三ニ〇の1stシングル。プロデュースは「RIZE」のKenKen。企画ものとは思えない程、クオリティの高い重厚なオルタナティブロック。立ったリフが心地よい。楽譜を分割し簡略化したパートをメンバーがそれぞれ実際に演奏している。

 第23位 僕とジョルジュ「恋のすゝめ」

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地下アイドル姫乃たまのソロユニット。作曲はカメラ=万年筆の佐藤優介。サイゾーなどでゲスいネタのライターとして活躍する姫乃が、何故こんなに名うてのアーティストを揃えられるのか、渋谷系の後継者の最右翼になりえたのか。それは父親がミュージシャンだからか、下北沢生まれだからか。よく分からないが、楽曲は言わずもがな、クールで華奢な歌声も必聴。

 第22位 KOTO「バレンタインズバレリーナ」

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佐々木喫茶プロデュース6ヶ月連続リリース第4弾シングル。齧歯類顔の16歳の女の子が、フリッフリのロリータ服を着て、キレッキレのジャズダンスを、ビッキビキのエレクトロに乗せて踊る様は今年アイドル現場で体感した最高の衝撃だった。喫茶プロデュース作品はどれも素晴らしかったが、特にこの曲は2人のスイングがベスト。

 第21位 Dorothy Little Happy「それは小さな空だった」

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宮城県仙台市を拠点とするDorothy Little Happyのミニアルバム「circle of the world」収録のミディアムバラード。今年アイドル界で最も大きなニュースがドロシーの分裂だろう。怒号と悲鳴で埋まった中野サンプラザは衝撃的だった。歌詞はそんな5人の運命を暗示しているよう。ドラマチックなバラードを歌わせたら右に出るものがいない、屈指の5人がいたことを忘れてはならない。

 第20位 里咲りさ「ボーンブレイクガール」 

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 少女閣下のインターナショナルのメンバーにして運営である「社長」こと里咲りさの6枚目のシングル。作詞作曲は里咲りさ。里咲の儚くも力強い歌声が魅力的なギターロック。「おいてけぼりの小人」「青い金魚」といった歌詞のフレーズ一つ一つが心を掴まれる。里咲が夏頃に使っていた「おもしろ四頭身」という自虐的なギャグは、私のツイートが元になってたりする。

 第19位 963「夢?幻?ドロップス」

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福岡県久留米市のケーブルテレビの企画から生まれた中学生ユニット。lyrical schoolなどを手掛ける岩渕竜也作詞と西原健一郎作曲。黒髪の美少女が手をつなぎ、肩を寄せあい、抱き合いながら囁くようにラップする様子は、言わずもがな同性愛、百合を連想させる。思春期というほんの一瞬の限られた時間でしか表現出来ない世界観だ。 

 第18位 チームしゃちほこ「シャンプーハット

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 ももいろクローバーZの妹分的アイドルであるチームしゃちほこ、7枚目のシングル。作詞作曲は「indigo la End」「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音。編曲はCMJK。細かいストリングスとブレイクビーツが重なった、しゃちほこらしい奇抜な楽曲。女性器の暗喩である「シャンプーハット」を「濡らさないで」と歌わせる川谷には流石の一言。 

 第17位 私立恵比寿中学「スーパーヒーロー」

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 ももいろクローバーZの妹分的アイドルである私立恵比寿中学の9枚目のシングル。ストリングス響く、エモーショナルでダイナミックなミディアムバラード。メンバーが一人づつソロで歌をつなぎ、サビで全員がユニゾンティッシュやお化けの曲を歌っていた彼女たちが、いつのまにこんなに成長したんだとドキリとさせられる。 

 第16位  Maison book girl「snow irony」

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元BiSのコショージメグミが属するMaison book girl、1stアルバム「bath room」収録曲。作詞作曲は、才能のあるロリコンとして知られるサクライケンタ。現代音楽とポップミュージックを掛けあわせ、変拍子が多用したサクライにしか作れないオリジナリティ溢れる作品。サクライの持つ絶望的な世界観を明るくパワフルに歌い上げたいずこねこを比較すると、サクライ寄りの狂気を孕んだイメージか。

  第15位 amiinaCanvas

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中学生ユニットamiinaの3rdシングル。作詞作曲はnanoline。壮大で幻想的なオルタナティブロックに、2人のピュアな歌声が乗ることで、唯一無二な世界観を作り出している。ファンとの合唱を重ねるたび、どんどん曲のテンションの上がっていく劇場型の構成に脱帽。かわいいみいなが2016年2月のライブを最後に脱退予定。 本当にもったいない。

第14位 lyrical school「ワンダーグラウンド」 

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 6人組HIPHOPアイドルユニットlyrical school、T-Palette Records8枚目のシングル。作詞はKICK THE CAN CREWのLITTLE。作曲はMUROの片腕として知られるSUI。心躍るディスコハウスに、恋人未満のような微妙な関係を思わせるリリックが終わらない夏を思い起こさせる。新たに元ライムベリーのhimeが加わり、さらにパワーアップしたパフォーマンスに期待がかかる。

 第13位 BiSHBiSH-星が瞬く夜に-」

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 元BiSマネージャーの渡辺淳之介が「もう一度BiSをはじめる」として生まれた新生クソアイドルBiSHの1stアルバム「Brand-new idol SHiT」のリード曲。サウンドプロデュースは松隈ケンタ。松隈らしいメロディアスでエモーショナルなロックチューンに仕上がった。メンバーがクソを被るMVも見もの。

 第12位 sora tob sakana「夜空を全部」

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「フジヤマプロジェクトジャパン」からデビューしたsora toba sakanaの1stシングル。プロデュースは「ハイスイノナサ」の照井順政。エモーショナルで観念的なオルタナティブロックに、アイドルの拙くも伸びやかな歌声が上手く融合。この世のものではない偶像としてのアイドルを体現している。リバーブ感がたまらない。

 第11位 乙女新党「ツチノコっていると思う...?♡」

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2軍をコンセプトに掲げる乙女新党7枚目のシングル。作詞作曲は清竜人ヒャダイン以降と言えばいいのだろうか、ファンタジックな世界に情報を詰め込むだけ詰め込んだトリッキーなポップチューン。テーマがUMAというところもいかにもだ。乱れ合う旋律の上を、現アイドル界最強の一角を担う其原有沙が縦横無尽に駆け巡る。

第10位 3776「3.11」

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富士山ご当地アイドル3776の1stシングル。プロデュースは石田彰。軽妙なギターが響くキャッチーなポップと思いきや、その歌詞は富士山噴火後の悲惨な世界を描写。その戦慄を井手ちよのがあっけらかんと歌い上げる。収録時間3776秒、富士山を登頂するというコンセプトアルバム「3776を聴かない理由があるとすれば」は、アイドル史に燦然と輝く大傑作となった。

 第9位 大阪☆春夏秋冬「Let you fly」

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 今年のTIFで最も注目を集めた大阪☆春夏秋冬の1stアルバム「カメレオン少女」収録のロックチューン。MINOR SCHOOLのカバー。聞き所は何と言ってもメインボーカル小川舞奈の迫力のある歌唱力。クラップからのコール、肩組み&ヘドバン、指差しと畳み掛けるアクションにテンションが最高潮。「nerve」「圧倒的なスタイル」「デモサヨナラ」並のアンセムになる可能性を秘めている一曲。

 第8位 Negicco「光のシュプール

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新潟県を拠点とするNegicco、T-Palette Records8枚目のシングル。作詞作曲はプロデューサーのconnie。編曲は田島貴男。ど真ん中の王道ポップスという原点回帰のウィンターソング。鼻にかかったNao☆の最初の一声で心を鷲掴みにされる。やはりNegiccoはconnieの楽曲が一番合う。このシングルで見事オリコンウィークリー5位を獲得した。

 第7位 東京女子流「Stay with me」

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 アーティスト宣言をした東京女子流の18枚目のシングル。作詞はメンバーの山邊未夢。作曲は島野聡でアレンジは松井寛。松井と島野のコンビはMISIA「つつみ込むように…」で知られる。恋人の別れがテーマのストリングスの響くしっとりしたバラード。メインボーカルをつとめる新井ひとみのキュートだが切ない歌声がたまらない。歌の要である小西彩乃の脱退が本当に残念。

 第6位 Especia「Aviator」

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大阪堀江を拠点に活動するEspeciaメジャー1stシングル。作曲と編曲はSchtein&Longer。メジャーデビュー・アルバムは、これまでとは異なる体制で制作されビックリしたが、今作から腕の見せ所といったところか。サックスが唸るアーバンな80sディスコファンクに乗った、メンバー特に脇田もなりの フュージョンギターのようなグルーヴィーな歌声が最高。

 第5位 Hauptharmonie「ボウ」

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 箱レコォズに参加する前にリリースされたHauptharmonie1stアルバム「Hauptharmonie」収録曲。ハードで気だるいギターとジャジーな鍵盤が鳴り響くダウナーなロック。こんな曲を歌うアイドルが出てきたのかと、初めて聞いた時は大きな衝撃を受けた。歌詞は異様な中二病感。アルバムはすべてシングルカット出来るレベルの高いクオリティを誇っている。

第4位 KOTO「ギザギザのロンリナイ」

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 KOTOの7枚目のシングル。作詞作曲はSAWA。KOTO自身のメルヘンチックな世界観と異様にマッチした極上のエレクトロ。タイトルにまずやられた。「グレープ色の夜」や「デジャブのようなトーン」といった歌詞がいちいち気持ち良い。毒っ気のある佐々木喫茶の作品もいいが、SAWAの作品ももっと聴きたい。

 第3位 西恵利香「MUSICを止めないで」

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Aell.西恵利香の1stシングル。作詞作曲はGALETTeなどを手掛ける筑田浩志。カッティングギターとブラスが鳴り響く、爽快なファンクチューンに、西の伸びやかな声が絡みあう。タイトル通り、歌を真正面から受けて立った渾身の一曲。アルバムには筑田の師匠筋に当たる松井寛も参加するとのことで楽しみだ。

第2位 ずんね from JC-WC「14才のおしえて」

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「女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。」に出演する吉田凜音と蒼波純によるユニット。プロデュースは大森靖子で、編曲はサクライケンタ。この4人の座組を作った時点で事実上の勝利。凜音の無双感と蒼波の処女性に、大森の刺々しい歌詞とサクライの独特の音楽性が絶妙かつ素晴らしいバランスで、14歳特有の不安定さを表現。

 第1位 Peach sugar snow「仮初の涙」

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山梨県のウィスパーヴォイスアイドルPeach sugar snow、youthsource records1stシングル。作詞作曲はプロデューサーの小林清美。戦後70年、世界中でISによるテロが起き、安保法案が可決され、日本の形が変容しだした今、アイドルに出来るのは寄り添うことだけ。もはやアイドルに「希望」を見いだせなくなった2015年、反知性主義、感情の劣化によりヘイトが跋扈するこの国で、あいなは自らの首を締めながら「絶望」をたった一人で歌うのだ。