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俺のアイドル楽曲大賞2019

平成から令和へと時代が変わった2019年、アイドル業界は多事多難の様相を呈した。NGT48山口真帆暴行事件は、一部メンバーの関与が疑われ、AKSの対応も後手に回ったことも相まって泥沼化。新たな暴露も飛び出し、解決の糸口は未だ見えない。NegiccoNao☆は現役アイドルのまま結婚を発表。アイドルの固定観念を揺るがした。前途多難のアイドル業界において、もはや信じられるのは楽曲のみ。ということで、本家「アイドル楽曲大賞」をベースに、2018年12月1日〜2019年11月30日リリースされたアイドル楽曲のベスト30を私の独断と偏見で選出し、ランキング付けした。

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 ※ハロプロ楽曲に関しては別枠にてレビュー。 

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第30位 ZOC「family name」

大森靖子を中心としたアイドルグループZOC、1stシングル。作詞作曲は「共犯者」という位置付けの大森靖子。鍵盤の旋律が美しい刺々しいロックチューン。過去のしがらみに苦悩する彼女たちが、アイドルとして新しい姓を手にすることで、可愛い自分を肯定(大森、西井以外は芸名)。そのきっかけとして「察して」のフレーズが置かれたというのも興味深い。「クッソ生きてやる」と決意を叫ぶパートに心を突き動かされる。

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第29位 EMOE「To Be Free

"「エモ」と「萌え」の化学反応"EMOE、2ndシングル。作詞はメンバーのさくらと池田翔太、作曲は池田翔太。グランドチャイムが舞う乾いた質感のトラックが、都会的な寂しさを演出。しっくり来る自分を求める心の内を吐露した内容で、メンバーの活動と重なる。クールな歌声と甘いラップが対照的。「レラリンルンリンラン」はまぐれ当たりじゃなかった。楽曲の良さとMCの酷さが反比例。

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第28位 フィロソフィーのダンスヒューリスティック・シティ」

来年、ソニー・ミュージックレーベルズからメジャーデビューするフィロソフィーのダンス、9枚目のシングル。作詞はヤマモトショウ、作曲は宮野弦士。平成の終わりをカップルの別れに捉えた、哀愁に満ちた切ないファンクチューン。イントロの奥津マリチチの途切れそうな儚い歌唱で一発心を掴まれる。ただ個人的にはあまりに芸達者過ぎて、アイドル的ほころびをあまり感じなくなっているので、この順位で。

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第27位 欅坂46「黒い羊」

今年、東京ドーム公演を成功させた欅坂46、8枚目のシングル。作詞は秋元康、作曲はナスカ。逆再生のピアノから始まり、うねりまくるスラップベース、儚い旋律の鍵盤の響く不穏なトラックがドラマティックに展開。平手の畳み掛ける語りは異質。同調圧力に屈することを拒否する、秋元康によるマーケティング重視な歌詞が、山口真帆がNGT48卒業公演で歌ったことで、奇しくも意味を持ち合わせてしまった。

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第26位 3776「2037年のバレンタイン」

富士山ご当地アイドル3776、企画盤である歳時記シリーズ「歳時記・第三巻」収録曲。作詞作曲はプロデューサーの石田彰。井出ちよのが富士山に積もる雪の気持ちになって歌う三拍子のブレイクビーツ。優雅に舞ったり、気まぐれに立ち止まったり、現人神感がヤバい怪曲。超奇抜ながらポップ。1年12ヶ月366日を1日12秒、73分12秒で表現したアルバム「歳時記」は現代美術の極北。医者に行けば病名がつくレベル。

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第25位 クマリデパート「シャダーイクン」

"世界のこころのデパート"クマリデパート、3rdシングル。作詞作曲はサクライケンタとWiennersの玉屋2060%。タイトルは「シャイン」と「ダーク」からの造語。陰と陽2人の変態がまさかの邂逅。意外や意外、お互いの作家性を生かしたまま魅力を引き出し合っていて生ハムメロン的。このハイテンションな変拍子を乗りこなすメンバーのスキルもなかなかのもの。特に早桜ニコの舌足らずなアニメ声の歌唱が素晴らしい。

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第24位 Kaede(Negicco)「クラウドナイン」

活動16年目NegiccoのメンバーKaede、CD-Rシングル。作詞作曲はカメラ=万年筆の佐藤優介。タイトルは「意気揚々」の意。爽快なギターの印象的なインディロックに乗った、透明感のあるKaedeの声が心にしみる。春の訪れが描いた詩的な歌詞一つ一つがとにかく美しい。Negiccoはまた別の戦えるラインが見つけた。遅咲きのソロデビューながら希望しかない。かえぽはずっと僕たちと一緒にいてくれるよね?かえぽー!

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第23位 RYUTist「センシティブサイン」

新潟を拠点とする4人組アイドルユニットRYUTist、7枚目のシングル。作詞作曲はシンリズム。出会いと別れを巡る期待と不安が交差する想いを描いた、さわやかかつキャッチーなポップナンバーで、同じ新潟出身のNegiccoを彷彿とさせる。ちょっとネガティブなのがRYUTistっぽい。Negiccoが30代を迎え曲調が変化すると共に、RYUTistがその後を追うようにかつてのNegiccoのような楽曲を歌うとは面白い現象。

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第22位 FAREWELL, MY L.u.v「gloomy girl」

愛知県名古屋を中心に活躍するガールズユニットFAREWELL, MY L.u.v、昨年、元メンバーの山添みなみのソロ曲「DEMO Mic Check ver.」としてリリースされ、今年1stEP「DONT TOUCH MY RADIO」に収録。作詞はSuimi、作曲はYASUSHI WATANABE。アーバンな本格派R&Bナンバーで、アダルトな曲調に反し、等身大の女の子の日常を伸びやかな歌声で届ける。タイロン・ウッズの去就はいかに。

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第21位 avandoned「マーガレット」

プレイング・プロデューサーの宇佐蔵べにを中心としたアイドルユニットavandoned、新体制として1stシングル。作詞作曲は信頼と実績つるうちはな。ガーリーでキュートなポップソング。ドラムとピアノが重ねられる度、気持ちが高ぶっていく。多幸感に溢れてるはずが、どこか刹那的。甘酸っぱい胸キュンな世界観は、まさに「別冊マーガレット」。二度死んで今が全盛期。

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第20位 広瀬愛菜「サマーレイン

Peach sugar snow・元3776の広瀬愛菜、2ndシングル。作詞は広瀬愛菜、作曲は関美彦。メロディアスなベースラインが印象的な、アーバンでメロウな80年代シティポップ。芯がありつつもどこか寂しげな愛菜の歌声は、天才だけど社会性のないプロデューサーの元を渡り歩いてきたからか。竹内まりや「Plastic Love」の要素もあり、海外の愛好家に見つかったら、一気に火がつくかも。

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第19位 RAY「バタフライエフェクト

「・・・・・・・・・」の運営チームがサポートする4人組アイドルグループRAY、1stシングル「Blue」収録曲。作詞はFor Tracy Hydeの管梓、作曲は管梓と楽曲ディレクターのみきれちゃん。轟音の中で鳴り響く、甘くとろけるギターリフ。幻想的なシューゲイザーの波に身を委ねると、脳内が混沌となる。刹那的な煌めきやノスタルジーも加わり、比較的ポップに。クソ運営を渡り歩いてきた月日の安住の地になるか。

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第18位 tipToe.「茜」

等身大センチメンタルアイドルグループtiptoe.、2ndフルアルバム「daydream」収録曲。作詞作曲は彼方あおい。片思いしている人との別れを描いた焦燥感に満ちたこの楽曲は、メンバーの在籍期間が最大3年のため、来年1月に5人のメンバーがグループを去るタイムリミットが近づいている現状を投影。「秘密」「クリームソーダのゆううつ」といった過去曲からの引用も。2番Bメロの花咲の絞り出すような歌声に鳥肌。

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第17位 東京女子流「Ever After」

今年デビュー10年目を迎えた東京女子流、配信シングル。作詞作曲は春ねむり。ローテンポのメランコリックなエレクトロポップ。地鳴りのように響くノイズの中、キラキラの鋭いサウンドが宙を舞う。破壊と再生。混沌の渦。タイトルは「末永く」の意味でハッピーエンドを締めくくる常套句だが、「ガラスの靴が粉々だって」とある通り「お姫様になれなかった私達の、続きの話。」の世界観を継承。

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第16位 HALLCA「コンプレックス・シティー

元Espesiaのリーダー冨永悠香が改名したソロアーティストHALLCA、1stアルバム「VILLA」収録曲。作詞作曲はHALLCA。Schtein & Longerこと東新レゾナントによるアレンジ済みの楽曲にHALLCAがメロディーを追加。咽び泣くようなブラスが印象的な、Especiaの進化させたアーバンファンクで、軽快でポジティブな歌声との相性抜群。HALLCAが歌えばそこは事実上のアビス。

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第15位 nuance「タイムマジックロンリー」

横浜のローカルアイドルnuance、アナログ盤としてリリースされ、その後3rdシングルに。作詞作曲はシンガーソングライターの佐藤嘉風。ワンマンライブを行った横浜のダンスホール、クリフサイドを舞台にタイムワープするストーリーで、異様な情報量で全部マシマシ状態。パーカッションが響くレトロでハイソな雰囲気の楽曲をメンバーが鬼気迫る表情で歌う。イントロとBメロの破滅的なフレーズが時空が歪んでいるよう。

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第14位 開歌-かいか-「かいかのMUSIC」

元アイドルネッサンス百岡古宵ら6人からなるボーカルグループ開歌-かいか-、配信EP「開歌-かいか-のMUSIC」収録曲。作詞はオワリカラのタカハシヒョウリ、作曲はタカハシヒョウリ、サクライケンタ。フィンガースナップとクラップを軸としたクールなダンスナンバー。音楽を手にした興奮と充足感を歌う。繊細で透明感のある美しいハーモニーが持ち味の彼女たちが、グッと力強くなるギャップにやられる。

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第13位 るなっち☆ほし「銀河に願いを」

”笑顔届ける流れ星”るなっち☆ほし、未音源化楽曲。作詞はあかのみやびに、作曲はかききまなみ。タイトルは「星のカービィ」のシナリオより。本来はエモーショナルなロック調のアレンジで、パワー系のボーカルが代わる代わる歌うWACKインスパイアがしっくり来そうなところを、ディストピア感のあるチップチューンをるなほし一人が声色を変えながら健気に歌うところに、たまらないグルーヴを感じた。

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第12位 kolme「The liar」

セルフプロデュースの3人組ガールズユニットkolme、昨年配信リリースされ、今年3rdアルバム「Hello kolme」に収録。作詞作曲はメンバーのMimori TominagaとKoumi Hayasaka。本心に嘘を付き曖昧な関係を維持する恋愛を描いた、鍵盤がスウィングするジャジーなアッパーチューン。クラブライクなサウンドで、徐々に熱量が高まる。海外進出に胸を張って送り出せると、きっとステップワンの亡霊たちも思っているはず。

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第11位 sora tob sakana「knock!knock!」

ポスト・ロックエレクトロニカをベースとした楽曲を歌うsora tob sakana、メジャー1stフルアルバム「World Fragment Tour」リード曲。作詞作曲は音楽プロデューサーのハイスイノナサの照井順政。日常から非日常へといざなうオサカナ銀河鉄道は、メジャーにフィールドを移しても絶賛爆走中。サビ前のオリエンタルな雰囲気のドロップがフックに。 2番頭の神﨑風花の物憂いげなポエトリーリーディングっぽいパートが最強。

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第10位 神宿「グリズリーに襲われたら♡」

UUUM所属の原宿発5人組アイドルユニット神宿、Mカードにてリリース。作詞作曲は清竜人MOSAIC.WAVがアレンジを手掛けたメルヘンチックな圧縮系電波ソング。怒涛の展開で繰り出されるフックの嵐がヤバい。令和の乙女新党「ツチノコっていると思う...?♡」。男性を振り回す女性目線の内容だが、ほんのりグロの香りがするのが流石。歌が拙いメンバーの歌割りや、寸劇の棒読みなど、隙を作るのが上手い。

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第9位 神宿「ボクハプラチナ」

神宿、配信曲。作詞作曲不明。EDM調のクールな4つ打ちダンスナンバーで、「グリズリー〜」で感じた隙を、完全にパテで塗り固めた。新境地を開拓というより、むしろストロングスタイルで戦えることを証明した感が強い。特に塩見のレゲエっぽい節回しには驚かされた。ガチ恋を煽る楽曲でピンチケを釣っていた神宿は何処へ。同調圧力への抵抗、陰鬱な雰囲気、一人称「ボク」に欅坂46の影響が若干見て取れる。

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第8位 カイ「ムーンライト・Tokyo」

BELLRING少女ハート・元THERE THERE THERESのメンバーのカイ、1stシングル。作詞はSAKA-SAMA楽曲を手掛けてきた遊星あい、作曲は吉田哲人。80年代テクノ歌謡で、今年のTRASH-UP!!から一曲選ぶならこれだ。カイの鼻にかかった音程が危うい歌い方も含め、昭和のアイドルレコードにありがちなデタラメな感じを絶妙に再現。このレトロフューチャーな世界観はカイ本人が志向したというから驚き。

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第7位 桜エビ〜ず「それは月曜日の9時のように」

今年ukkaに改名した桜エビ〜ず、配信シングルとしてリリースされ、その後2ndアルバム「octave」に収録。作詞はONIGAWARAの竹内サティフォ、作曲はONIGAWARA 。フジテレビ系月9ドラマオマージュの、ファンキーでご機嫌なポップチューン。綺羅びやかでバブリーな90年代の魅力が詰め込まれた。畳み掛けるキャッチーな韻が最高に心地よい。水春は歴代スタダアイドルで間違いなく最強クラスだ。

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第6位 jubilee jubilee「ゆびきり」

鳥取島根のライブハウスAZTiCがプロデュースするjubilee jubilee、3rdシングル「butterfly effect」収録曲。作詞はAnnabel、作曲は蓮尾理之とsiraphのコンビが手掛けた。甘く危険な香りのするサックスが唸る、AOR系のラグジュアリーなナンバー。メロウな極上のサウンドに乗せて心の内に秘めていた恋心を、ピュアな歌声で精一杯背伸びして歌う。このギャップがアイドル楽曲の醍醐味。VIVA背徳感。

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第5位 BiS「STUPiD」

第2期BiSの解散を受けて結成された第3期BiS、1stアルバム「Brand-new idol Society」収録曲。作詞は松隈ケンタとJxSxKことプロデューサー渡辺淳之介、作曲は松隈ケンタ。松隈節炸裂の疾走感溢れるエモいロックに、悪ガキっぽいストーレートなヴォーカルが乗る。第1期BiSのときに起きていたスリリングな化学反応を久々に感じた。先鋭化した狂気と、ケレン味のない純真無垢さって割と表裏一体なのかもしれない。

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第4位 Peach sugar story「森の中の赤ずきん

山梨発ウィスパーボイスアイドルPeach sugar story、1stシングル。作詞作曲はプロデューサーの小林清美。途切れていたPssの血脈を瑠璃が受け継ぎソロユニットとして復活。赤ずきんがモチーフで、清美先生のダークな世界観を瑠璃が十二分に演じる。ラストでウィスパーボイスからノーマルボイスになるとともに、コーラスだったはずの清美先生の声が全面に出てきて、瑠璃の身体を通して自我が剥き出しになる感じがエモい。

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第3位 眉村ちあき「おじさん」

“天才”眉村ちあき、メジャー1stアルバム「めじゃめじゃもんじゃ」収録曲。作詞作曲は眉村ちあき。九州に転勤してしまうおじさんへの想いを、アコギ一本で歌った失恋ソング。万人から愛される天真爛漫なキャラクターにも悩みがある様子。愛憎入り交じった歌詞で「誠に心より御礼申し上げます」の絶唱はいかようにも意味が取れる。新木場スタジオコーストのワンマンでは号泣してしまった。眉村さん、意外と恋愛体質。

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第2位 加納エミリ「ごめんね」

"NEO・エレポップ・ガール"加納エミリ、昨年1stEP「EP.1」に収録され、今年アナログ盤としてリリース。作詞作曲は加納エミリ。ヘンテコな加納が奇抜な振り付けで、変態的なイタロディスコを歌う、何もかもがどうかしてる一曲。コント「もしも森高千里NEW ORDERを歌ったら」。すっけらかんとした歌唱で、未練タラタラの男を一蹴。自らのアーティスト性をアイドルというプロットに落とし込んだ「敢えて」な部分と、本人が意図していないほころびのバランスが絶妙。

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第1位 でんぱ組.inc形而上学的、魔法」

今年、夢眠ねむが卒業したでんぱ組.inc、19枚目のシングル「いのちのよろこび」収録曲。作詞作曲はツイ廃のBillie Eilishこと諭吉佳作/men。佐野康夫のドラムが冴え渡るジャジーな生音のサウンドな一方、ヴォーカルはオートチューンで無機質に加工。一人ずつ歌い繋ぎユニゾンはなし。「わたし」に違和感を覚える「わたし」がメタ的に語られており、否が応でも去ったメンバーを連想させるし、現メンバーを含め多くのアイドル、何ならヲタクも共感するところだろう。この楽曲を当時15歳の女の子がiPhoneGarageBandで作ったとは衝撃。まさに長く短い祭。でんぱ組.incは何の権威もない当ランキング、7年ぶり2度目の1位。実はこのレビューを書いているのが2019年9月18日(水)だったりするのですが、先程古川未鈴さんがご結婚を発表されました。おめでとうございます。

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